なぜ看護師はモンスター患者に悩まされるのか?

宇井幸子(35歳・看護師・千葉県)

看護師をやっていると「モンスター患者」に悩まされる。

ちょっとしたミスで騒ぎ立て、土下座しろ、責任者を呼べ、医者を呼べ、挙句の果てには脅迫や暴力にまで発展する。
胸ぐらをつかまれた、突き飛ばされた、殴られた、蹴られたという報告は嫌というほど聞いた。

私自身、ボールペンで刺された過去がある(まだ薄っすらと傷がある)
何年も前の話だが、その恐怖は今でも夢に出てくるほどのトラウマになっている。

だからなのか「モンスタークレーマー」に関しては、人一倍神経を尖らせている。

最近のクレーマーの傾向として、病院で無理難題を言っただけは飽き足りず、ネット上の口コミにあることない事、自分の都合の良いように書くようになっている。
実名を出して人格否定はお手の物。

病院外のモンスタークレーマー

以前しまむら(服屋)で「糸がほつれていた!返金!!返金!!!」と大声(店の外まで聞こえるくらい)で騒いでいるオバサンを見たことがある。
後日、その店舗の口コミ(GoogleMap)をチェックして見ると、案の定あのオバサンが書いたと思わしき悪口が書かれていた。
しかも「横暴な店員が… (実際は平謝り)」「店長の〇〇は本当に頭が悪く…(いやいやアナタでしょ)」と事実を大幅に誇張していた。

彼女は、数百円の服に何を求めているのか?
糸のほつれが気になるなら、なぜブランド物を買わない?

世の中には常識の通用しない人が一定数いる。
「もし看護師を辞めても、しまむらでは働きたくない」と思った。

病院としまむらの共通点

病院としまむらには、悲しい共通点がある。

「客を選べない仕事」なのだ。
客を選べない仕事ほど、クレーマーに悩まされる。

特に病院は、公共性が求められるため、患者を拒否するのが難しい。
そうして現場の医師や看護師が疲弊していく。

患者を選ぶ病院

最近は「患者を選ぶ」病院が増えてきた。

個室のみ病院、自費治療中心の病院、紹介専門のクリニック。
介護施設でも、1000万円以上の初期費用をとる所が増えている。

もちろんその目的は病院によって違う。
単純に「裕福層にお金を出してもらおう」というマーケット的な理由なのだと思う。

でも結果として、理不尽なクレーマーは劇的に減る。

モンスタークレーマーのいない職場とは?

例えば健診センターは、意外にもモンスタークレーマーが少ない。

というのも会社経由で検査する人が多いからだ。
クレームを言えば、会社にもそれが伝わるから無茶を言う人はそういない。

もちろん健診センターでも厄介な人達はたまに見かけた。
例えば建設系の方々は、気が短いのか、スタッフだけではなく周りのお客さんまで威嚇することがある。
でもそれが2度も続けば「来年から御社の診断は控えさせていただきます」となる。

こうしたBtoB(企業向け)の商売は、モンスタークレーマーに出会う確率が圧倒的に少ない。

それに対して個人向けの商売は、モンスタークレーマーに出くわす可能性が高くなる。
とくに貧困層向けの商売ほどその傾向が強くなる。
しまむらやマクドナルド、病院などがいい例だ。

とくに言えば、地域医療を名乗る病院。
生活保護者が押し寄せ、無理難題を言い、息を吸うように暴言を吐き、暴力沙汰も多い。

「失うものがない人」「がけっぷちの人」「常識が欠如した人」

こうした人達が来る病院は本当に地獄だ。

でも最近は、患者を選ぶ所が増えている。
理不尽なクレームほど解決が難しく、スタッフの退職に繋がりやすくもあり、割に合わないから。

特に個人クリニックはこうした傾向が広がっている。
小さな組織ほど、クレーマーの負担は大きくなるから。

モンスターが少ない病院で働いた感想

これからの時代「患者を選別しない病院」は、優秀なスタッフを集めるのが難しくなる。

もちろん「お客は神様」の文化である日本において、それは難しいかもしれない。
特に病院の診療拒否は「命」にも関わってくる。

でも裕福層だけを相手にする病院であったり、院長の方針で「診療拒否」する病院は確実に増えている。

もちろん裕福層でも面倒な人はいる。
しかしその数は、普通の病院に比べて圧倒的に少ない。

あなたはクレーマーが少ない病院で働いたことはあるだろうか?

私は何度かそうした病院で働いたことがある。
働いてみると想像以上にストレスは少ない。
面倒な人と付き合わないだけで、人生の幸福度というやつは大きく変わるようだ。

モンスターのいない病院の探し方

さて。
問題はモンスター患者がいない病院をどうやって探すかだ。

私が転職時にやるのは、ネットで病院の口コミを見る事。
例えば「GoogleMap」の口コミを見ると、「診療拒否」している病院ほど、悪口が多いのに気が付く。
クレーマーの方々は憂さ晴らしに口コミを書く。

ネットの評判が悪い病院ほど「看護師にとっては働きやすい」というのは何か矛盾しているが、その傾向は確実にある。
もちろんただ単に最悪な病院という危険もあるし、医療系はそもそも悪い口コミが多く、クレーマーの不在を見分けるのは結構難しい。

私自身、何年も口コミを見続けて、肌感覚的に「この病院は診療拒否しているな」と分かるようになった。
友人が転職するときは、私が必ず口コミをチェックして、分析している。
自慢ではないが、その分析はかなりの確率で当たっている。

そこまで口コミ分析に力を入れたくない人は、少し手間になるが「担当者が付いてくれるタイプ」の転職サイトを利用するのも良い。
働いている看護師から内情を聞いてくれるため、モンスタークレーマーの状況を看護師目線で知ることができる。

最近の転職サイトはそうした情報提供に力を入れている所もある。
例えば「看護roo」は、過去にサポートした看護から情報を集めてくれるサービスを主力として、看護師向けとしては日本最大のサイトになった。
そうしたサービスを使うのが、上手に転職する方法でもある。

最後に

疑問:なぜ看護師はモンスター患者に悩まされるのか?
回答:患者を選ばないから。

これが私なりの答えだ。

「恐れ入りますが、マナーを守れない方の診療はお受けできません」

実際、こう言ってくれる病院は本当に働きやすい。
ストレスは格段に減る。

患者は神様じゃない。
お客様でもない。

私たちは不幸にもクレーマーの巣窟である病院で働いている。

が、幸運にも看護師である。
看護師なら、それなりに職場を選ぶことができる。

職場を選べない公務員の方々は本当に大変だと思う。
とくに役所や図書館の窓口業務は地獄だと聞く。

私たち看護師は「比較的転職しやすい」という特権を生かして、スタッフを守ってくれる病院を粛々と探したらいい。